2021.03.18

お知らせ

金属3Dプリンターのルール【造形上の注意点&必要な付帯設備(抜粋版)】

こんにちわ。

 

株式会社タカノです。

 

当記事は金属3Dプリンターのルールについてご説明します。


当記事は下記の2点を知りたい方へ向けて、ポイントを絞ってお伝えします。

 

「造形状の注意点を知りたい」

 

「必要な付帯設備はどのようなものがあるのだろう」

 

ぜひご覧ください。


金属積層造形のルール

 

「自由に造形できる」と思われがちな金属3Dプリンターですが、大きく3つの制約を考えなければいけません。

 

それは「サポート」「応力による反り」「湿度」です。


金属積層造形のルール: 1)サポート

 

サポートとは造形品と一緒に造形をされる支柱のことです。下記図の中では、造形品の下にある”切り取り線のようなものが付いたもの”がサポートです。

サポートの役割は大きく2つあり「造形姿勢を保つ」「熱を逃がす」ことです。

 

造形中に形状が崩れることを防ぐため、主に下記①②③箇所にサポートが生成されます(”ポイント”については後ほどご説明します)。

また熱応力により造形が崩れることを防ぐため熱を逃がす役割も担っています(”熱応力”については後ほどご説明します)。

 

印刷が終わった後に生成されたサポートを除去する必要があります。

 

実際に金属3Dプリンターで造形したオブジェを例に、サポート生成から除去までの流れをご説明します

まず金属積層造形用のSTLデータから、プリントをスタートします。

造形後に融解されなかった金属粉末材料の中から、造形品が出てきます。

 

付着した金属粉末を刷毛で落とします。

ハンマーなどを使って、付着した・内部に残った粉を落とします(事前に粉が抜けるように造形品に抜け穴を設けておきます)。

サポートが付いた形で姿を現します。

【注意】アルミニウムの粉は非常に微粒なため「吸い込まない為のマスク」「手に付着しないように手袋」を装着して作業を行ってください

 

マスクは顔に密着するように設計された「防じんマスク」を使用しましょう。

 

また手袋をして金属粉が手に付着しないようにしましょう。

 

サポートを除去していきます。

ニッパー・ペンチを使って除去することが出来ます(切ったり、ねじ切ったりするイメージです)。

 

内部のサポートを取る時にはピンポンチ・ピック&フックセットを使って行います。

 

ニッパーと併用し、サポートが多くある箇所はこのペンチでサポートを”むしり取る”と効率的に作業を進められます。

 

ニッパー・ペンチが届かない場所には、ピンポンチや、ピック&フックセットを使い除去します(サポートをかき出すイメージです)。

 

紙やすりで表面を仕上げます。

次にショットブラスト処理を行います。

紙やすりとショットブラストを2、3回繰り返すことで、表面がきれいに仕上がります。

 

具体的には、金属3Dプリンターからの造形上がり時はRa10±1㎜(少しザラザラした感触)ですが、紙ヤスリ&ショットブラストによりRa1㎜(スベスベした感触)程度まで仕上げることが出来ます。

 

造形品によってはより高い精度(寸法公差100分台など)が必要になる場合もあります。

 

100分台の精度が必要な時は、機械加工やワイヤーカットなどを併用して精度を出す必要があります。

 

以上、一連の工程を経て、最初に見て頂いたオブジェが完成します。

 

ご覧頂いた通り、サポートの除去は非常に工数が掛かります。特に内部に出来たサポートは特に除去が困難です。

 

出来る限りサポートが付かない形状で造形をすることがポイントです。


金属積層造形のルール:2)応力による反り

 

応力による反りは、印刷後に造形品に溜まる残応力(物体内に残る力)が原因で発生します。

 

金属積層造形では、材料である金属粉に高温のレーザー光を照射し溶融させて積層造形します。冷たい金属粉に高熱のレーザー光を照射する為、造形品の内部に残応力が溜まります。

 

従って、サポート除去後に残応力が造形品に影響し「反り」が発生します下記は事例となりますが、底面の左右が斜め上に反り上がってしまいます。

 

質量が大きい造形品ほどその傾向が顕著に現れます。例えば豆腐のような四角く質量がある物体を造形した場合、底面が大きく反り上がります。

残念ながら現時点ではこの熱応力を完全に無くすことは出来ません。

 

しかし緩和をすることで、望む形状・寸法公差で造形することは可能です。

 

緩和の方法としては大きく3つあります。

①は造形後にサポートが付いたまま炉に入れて熱するという方法です。

 

熱することで残応力が造形品から放たれて、造形品の反りを回避することができます(熱した影響によりステンレス素材などは写真のような酸化皮膜が付く場合があります)。

 

②は金属3Dプリンターによっては、造形前に造形エリアを加熱する(温める)ことで、応力を緩和させる機能を持ったプリンターもありますが非常に高額です。

 

②の手段を取ることが難しい場合は、①の炉による熱処理と③の反りにくい設計を掛け合わせることで、反りにくい造形を実現するかがポイントになります。


金属積層造形のルール:3)湿度

 

金属粉末材料は湿度により造形品質が低下します。材料分の保管・造形時において湿度の管理(除湿)が必要になります。

 

また金属3Dプリンターを設置する部屋は、湿度を一定に保つ必要があります(アルミニウムの場合は常に湿度35%以下の環境である必要がありますが、部屋を全面改装した場合は費用が高額となります)。

以上、ご覧頂きありがとうございました。

 

株式会社タカノ